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更新日:2009年9月16日

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書名:The Art of Multiprocessor Programming
The Art of Multiprocessor Programming

著者 Maurice HerlihyNir Shavit 著/株式会社クイープ
出版社 アスキー・メディアワークス/KADOKAWA
ISBN 978-4-04-867988-6
発行日
2009年9月1日
価格 8,424円
(本体7,800円+税)
仕様 単色刷/B5変型判/576頁
分類 プログラミング(その他)
 マルチプロセッサプログラミングあるいは並行プログラミング、複数のプログラムが同時並行で動作してひとつの問題を処理するという、そういうプログラミングの技術は急速に重要になってきています。
 て、このあいだもこんなことを言ってParallel Studioのマニュアル本をレビューしたばかりですけれども、新刊がまた1冊出てきたので、これも取り上げておくことにしました。やっぱりね、並行プログラミングはそれくらい重要な技術だと思うし、それに、マルチプロセッサ・マルチコアでなくても、メモリが複数のバンクに分かれていたりキャッシュが挟まっていれば並行プログラミングと同様の問題が発生する、ネットワーク越しの通信はもちろん周辺機器とのやりとりにも同じ問題が潜んでいる、そんな時代を迎えて、並行プログラミングの知識普及・啓蒙はさらにさらに重要だと思うのですよ。

 私の考えでは、並行プログラミングが難しい理由は、それ以前のプログラミングの暗黙の前提である「順序」が通用しなくなることです。プログラムは書いてある順序で順々に実行されていくという常識、これが成り立たなくなる場面が出てくるので、たいていの人があっさり足をすくわれる。というよりたぶん常識が邪魔をして、順序が成り立たない場面にぶつかっても成り立つように錯覚してしまうのでしょう。
 順序が成り立たない場面というのはつまりどういう場面か、どうしたらそういう場面でも正しくかつ効率よく処理を行えるのか。この本ではそのあたりの理論が体系的にまとめられています。大学の最終年次の教科書として、と前書きに書いてあるのですが、学部で言うと理学部でしょうね。つまり、コンピュータサイエンスとしての並行プログラミングの話になってます。「原理から実践まで」と副題にはあるんですが、実践というのはJavaでのコーディングまでで、動作テストやデバッグには触れられていません。や、現場の問題としては、プログラムミスがあってもたまたま動いてしまったりして確実な動作テストができないということが非常に難しいところなのですけど。

 逆説的だけど、並行プログラミングはそんなに難しくないはずだとも私は思っています。この本だと最初にAliceとBobのたとえ話が出てきますが、2人以上の人が並行に何かを処理することって日常生活でいくらでも経験しているわけですからね。この本の内容をうまく整理して教えれば、大学の最終年次ではなく1年の終わりくらい、いや高校生でも、きちんと動く並行プログラムを書く方法の要点は身に付けられると思うし、そうするべき時代にさしかかっていると思う。
 プログラミングの初級段階を教える立場にいる方々にはぜひとも、この本の中身をうまく整理して教えられるように工夫していただけるとよいと思います。


書評者: 塩見 真一 パソコンの本フォーラム

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