ブックモールPC

ブックレビュー
更新日:2004年10月6日

全レビュー一覧&レビュー検索はこちら >>
書名:愛人[AI-REN](5)
愛人[AI-REN](5)

著者 田中ユタカ
出版社 白泉社
ISBN 978-4-592-13355-1
発行日
2004年9月29日
価格 596円
(本体552円+税)
仕様 B6判/280頁
分類 コミック(アダルト)
発売日の朝、池袋まで行って、開店前から並んで、買ってきました。山手線の電車の中で、後書きを読みました。胸の奥がきんと鳴りました。また涙が出てきました。
田中ユタカが、田中ユタカが、『愛人』を完結させて、また歩きだしたのです。

田中ユタカの作品を一言で言うと「純真」です。18禁マークが付いていても、登場人物はあくまで純真です。
いえ、純真なのは田中ユタカ自身なのです。ひたむきで、いまの世の中では馬鹿げて見えるくらいひたむきで、もう少し利口に立ち回ったっていいのに、見ていていたたまれなくなるくらいまっすぐで。全身全霊全力で懸命にまんがを描く田中ユタカの姿は、灼けただれた無限の荒野を、重荷にふらつきうつむいて、なお歯を食いしばって歩く人を思わせました。その姿は私の、おこがましいながら、心の同志でした。彼が歩いていることを想って、私も歯を食いしばって歩きました。

数年前、新刊がふっと途切れました。彼が倒れた……行き詰まって描けなくなったことは明らかでした。私も悩みました。もしこのまま田中ユタカを失うことになったらと思うといても立ってもいられない気がして、しかし、私には何もできませんでした。
手紙を書いて励ますことはできます。だけど、描けなくて苦しんでいるときに期待されるのはさらに苦しいでしょう。それに、田中ユタカがなすべきことは、ファンの期待に応えるなどというこぎれいなことではないはずです。もしも彼の道が苦しみ抜いた末に筆を折ることだとしたら、私の感傷など何の意味がある、黙ってその道を行かせてやるべきではないかとも思いました。

ほぼ2年の空白の後、『しあわせえっち』が出ました。おそるおそる読んでみると、リメイクでも遺筆でもなく、新作でした。画風も少し変わっていました。……田中ユタカが帰ってきた、まわりの人たちに支えられて、また立ち上がった。私は嬉しくて、申しわけなくて、生まれて初めてファンレターというものを書きました。
それからまた1年、この『愛人(5)』が出ました。モアの吉田さん、白泉社の中澤さん。田中ユタカの作品をまっすぐ受け止めて、いい本にして世に送り出そうと頑張っている人たちがいるのです。私がその中の一人でないのは悔しい気もしますが、いや、私は私の荷を負って私の道を歩くだけのことです。

済みません、コンピュータ書でないばかりか、コミックのレビューにもなりませんでした。さらにもってなにをいまさらという話ですが、ここで私に宣言させてください。
塩見真一は、田中ユタカを応援します。


書評者: 塩見 真一 パソコンの本フォーラム

全レビュー一覧&レビュー検索はこちら >>

Copyright 2002 Bookmall Japan Corporation All rights reserved.
このWEBサイトに掲載されている記事・写真などの無断転載を禁じます。
このWEBサイトについてのお問い合わせはこちらまで。
株式会社ブックモール ジャパン